【Q&A】成果連結だとなぜ手形の割引が借入金になるの?
Q.今、連結会計の分野で成果連結を勉強しているのですが、親会社が子会社から受け取った手形を銀行で割り引くと、借入金ってなるんですが、これはなぜですか? 教えて、ひなたまさん!
A.はーい、ひなたまさんが応えます! ちなみにひなたまさんは、ひなたまって名前を響きが「超かわいい~!」って思ってつけたんだよ。30代男性だよ。
はい、成果連結における手形の話ですね。
これを理解するためには、まず手形の財務諸表上の扱いから確認していきましょう。
商品売買に用いられた手形は「受取手形・支払手形」として表示しますが、商品売買で用いた手形と他の手形は分ける必要がありましたよね。
メインの営業(本業とか主たる営業とも言います)が商品売買であるなら、それ以外の取引、たとえば備品を購入したという取引であるなら、「営業外支払手形」として計上します。
これが貸借対照表になると、流動項目と固定項目に分ける必要があり、「短期営業外支払手形・長期営業外支払手形」というような形になります。
で、企業が「期日に必ず支払います!」と約束する約束手形を記入して、この手形を銀行に持っていきます。そして、その当社の約束手形を「必ず払いますから」と銀行に渡し、他の会社の手形を割り引いたときと同じく、銀行から現金を受け取ります。
これ、手形を使ってはいますが、銀行に「期日に必ず払いますから!」と言って現金を受け取っているので、会計的な内容としては、期日までの現金の借入れと同じものとなります。
余談ですが、手形は支払期日を破るとキツいペナルティがあります。
手形を使った借入れは手形を借用証書代わりに使って、必ず返すという約束をするものですから、通常の借用証書より厳しいイメージになります。
しかし、厳しい形式での借入れであっても金銭の借入れには変わりませんので、貸借対照表上では、手形の借入れも他の借入金と分けずに「借入金」と書きます。
なお、これも1年基準の下、「短期借入金」となります。
基本的に手形は短期取引が想定されていますので、指示がなくても貸借対照表上には「短期借入金」と記録するようにしてください。
と、話が長くなりましたが、手形を使った銀行からの借入れは貸借対照表上だと「短期借入金」となることを頭に置いておき、連結会計での処理を見ていきましょう。
上の図表の取引は、親会社が子会社から商品500を仕入れたとき、手形で取引を行ったというものです。
そして、その手形を受け取った子会社が、銀行で受取手形400を割り引いて現金400を受け取ったという形になります。(本来は手形売却損が発生しますが、連結の問題でははたいてい簡略化されます)
これらの取引により、親会社のB/Sには支払手形500が、子会社のB/Sには受取手形100が計上されることになります。
では、これの連結上あるべき姿を考えて見ましょう。
(連結修正仕訳は、①個別を考え、②連結上のあるべき姿を考え、③その①と②のズレを連結修正仕訳とするという流れです。くわしくは過去の記事で)
連結上あるべき取引を考えるときのポイントは、自社グループをひとまとめにして考えるということです。
グループ内の取引は完全に無視をして、自社グループを1つの会社のように考えて取引を見てみるわけです。
すると、売買取引はそもそも存在していませんし、手形を用いた割引は、「自社グループの手形を使って銀行からお金を借り入れた」という取引に姿を変えます。
まとめると、連結上で本来あるべきなのは、自社グループが外部と取引をした、
(借)現金400/(貸)借入金400
という部分だけになります。
この形になるよう連結修正仕訳を書き上げると、以下のようになります。
ここでのポイントは、
(借)支払手形 500/(貸)受取手形 100
/ 短期借入金 400
という仕訳が、「支払手形400を短期借入金になった」というのではないってことです。
個別上の「支払手形500と受取手形500」がまず相殺された上で、個別上の手形の割引取引が連結上ではただの借入金であるため、銀行に渡したのは受取手形ではなく、借用書としての手形なので「短期借入金」になっているということです。
ちょっと複雑になったので、仕訳でも書いておくと、
・まず、内部取引で発生した支払手形と受取手形を消します。
(借)支払手形500/(貸)受取手形500
・そして、グループから見れば手形の割引ではなく手形借入れなので、
(借)受取手形400/(貸)短期借入金400
となり、これを合体させたのが上記の連結修正仕訳になる、という形です。
うーん、なかなか複雑ですよね。いかがでしょう、つかめましたでしょうか。
この個別と連結の違いをスッとつかむのは、みなさん苦労されているところなので、読んでもよく分からなかったとなれば、またご質問くださいね! なんども負けずにがんばっていきましょう!