【簿記Q&A】税効果会計ってなんのためにするの?
Q:税効果会計っていうのが出てきましたが、なにをしているのか分かりません。教えて、ひなたま屋さん!
A:はい、ひなたま屋がお応えします!
税効果、難しいですよね。私も最初勉強したとき、意味がさっぱり分かりませんでした。
実はそれ、ワケがあるのです。
そのワケを簡単に言うと、「税効果会計は実際の取引ではない」というものです。
税効果は何かの取引に対する仕訳ではなく、会計として正しい数値を財務諸表に反映する手続きなのです。
正しい数値、と言ってもちょっと分かりにくいと思うので、簡単な例を。
まず、通常の会計で収益200・費用100の、差引きで利益100を計上したとします。
この利益に対応して法人税等がかかります。
ここでは税率30%ととして、税金30が計算されたとしましょう。
ですが、会計で計算した結果を税務署に見せると、
「費用のうち減価償却費50は、税務の計算だと費用とは認められない」
と言われ、修正することになりました。
こういう修正、ときどきあるんです。
たとえば、耐用年数。
会計では「企業にあった合理的に使える年数」を見積もるのですが、税務では「みんな共通のルール通り年数」をムリヤリ適用されることがあります。
納税は国税庁のルールに従わなければならないので、もう一度、国税庁のルールに従って税金の支払額を計算することになりました。
その結果、収益200・費用50の利益150と計算され、その30%で税金45を払うことになったのです。
では、ここで問題です。
正しい税金は、
・通常の会計で計算した税金30
・国税庁のルールに合わせて計算した税金45
このうち、どちらでしょう?
その答えは、税金の支払額の計算であれば45です。
会計の計算がなんであろうと、支払額は税務のルールに基づきます。
ですが、財務諸表を作成するうえでの会計上の計算においては会計のルールに基づいた税額で表示すべきなので、法人税等は30になるんです。
これだけの説明で理解できたらかなりすごいのですが、難しいですよね。
ですが、この背景には「会計の理論」があって、それをつかめば一気に理解できるようになります。
今回は、その税効果会計の背景にある会計理論を説明します。
ここからは、試験問題を解くだけなら不要な内容もいっぱい話します。
でも、理屈から理解できるとかなりスッキリできるんじゃないかなと思います。
なので、かなり長々と話してしまいますが、税効果がなんとなく分かる方も、さっぱり分からない方も、どうかスッキリとした理解のため、お付き合いいただければ幸いです。
税効果の背景にある会計理論
適正な期間損益計算
会計理論、なんて言いましたが、たいして難しい話でもないです。
現在の会計では、有用な情報を提供することを重視している、という考え方があるという話です。
会計で作る財務諸表は、情報として役に立たないと意味はないですし、そりゃ有用な情報を重視しますよね。
では、会計の計算か税務の計算か、どちらが有用な情報かというと、これは会計の計算になります。
そもそも税務の目的は、簡単に言うと「公平性」にあります。
現実はさておき、考え方としては、国民みんなが公平だと納得できるようなルールが定められているのです。
たとえば、貸倒引当金。
貸倒引当金は「今後の貸倒れの可能性を見積もって計上」するのですが、会計だと見積りの計算は企業自身の予測に基づいて行うものなんです。
「え、企業が自分で勝手に予測していいの?」
って思うかもしれませんが、いいのです。
むしろ、企業自身の見積りこそが有用な情報になります。
企業のことがもっともよく分かるのは企業自身。
ですから、それぞれが自身の経営状態にあわせて見積もるよう求められているのです。
もちろん、見積は合理的なものでなければダメです。
上場企業だと公認会計士などのチェックが入って、合理的でないと株式の取引を止められたりします。
ですが、合理的と認められる範囲でなら貸倒引当金の見積りは企業が自由に決定することができるのです。
「じゃあ、貸倒引当金をできるかぎり大きく見積もれば税金を下げられて、お得?」
たしかに、貸倒引当金を多く見積もれば、費用の貸倒引当金繰入は大きくなります。
ですが、そんなので税金を調整されたらズルいですよね。
そこで税法の出番です。
そういう調整をできないように、貸倒引当金には「ここまでなら繰り入れていいよ」という限度額が決められているのです。
上記のケースで考えてみます。
「税務上は損金として認められなかった」とありますが、この損金というものは費用とほぼ同じものです。
・会計上の費用≒税務上の損金
・会計上の収益≒税務上の益金
そして、収益から費用を引くと当期純利益、正しくは税引前当期純利益が求められますが、これを税務では課税所得と呼んでいます。
・会計上の税引前当期純利益≒税務上の課税所得
(厳密には違うのですが、それは簿記会計でなく税務での勉強内容となります)
と、このように会計と税務では呼び名が変わってくるので、問題文を読むときなどはご注意を。
そして、「ほぼ同じ」であって、完全に同じではありません。
この違いにより発生するのが、税効果です。
上記の例では「貸倒引当金500」が税務では認められなくなりました。
そのため、次のような計算結果になります。
このように税金の計算結果が違うわけですが、どちらが正しい税額かと言えば、
・税金として支払うべき法人税等の額なら、750
・財務諸表に表示すべき会計上の法人税等なら、600
となります。
会計上、というのがつかみにくいかもしれないので、あと少しだけ補足します。
会計では有用な情報を重視するのはお話しましたが、では、どんな情報が有用なのでしょうか?
それは、まず「適正な一会計期間の損益」が分かる情報です。
たとえば、投資家たちが注目するのは配当の情報。
株主への配当はもうかった分からが行われるので、「一年間で企業がどれだけもうけたか」という情報は非常に有用になります。
そのため、会計では適正な期間損益計算が求められます。
その適正な期間損益計算をするためには、企業が経営活動であげた成果、つまり収益を一年分きっちり書かなければなりません。
そして、費用はその成果をあげるために消費した犠牲や努力を表します。
・収益=企業が経営活動であげた成果
・費用=成果(収益)のために消費した犠牲・努力
ちょっと難しいところなので、商品売買を例に挙げます。
商品を買ってきたときには仕入としますが、これは正しい費用ではありません。
費用は収益に対応するもの。
この場合だと、「売上のために消費した商品」の部分だけが費用になります。
なので、まだ売れていない期末商品は、
(借)繰越商品××× /(貸)仕入×××
と、費用である仕入から取り除くわけです。
貸倒引当金もそうです。
当期の売上により発生した売掛金があるとします。
それが翌期以降に貸倒れるなあと予測できるなら、その貸倒れの費用は翌期でなく、当期に計上するべきです。
お金を払うかあやしい人に売上げたり、ちゃんと回収できてなかったりしたのは、当期の責任です。
なので、実際に貸し倒れる未来ではなく、きちんと当期の責任として費用計上することが大切になります。
このように、期間収益と期間費用を対応させて、適正な期間損益を計算する。
そうすることにより、企業が生み出した成果とその犠牲がきっちり対応した、より適正な企業の業績が測定できて、それが財務諸表に書かれれば、有用な情報となるわけです。
(ちなみに、これを費用収益対応の原則と言い、簿記1級などの会計理論問題だと定番のポイントとなります)
この考え方に従えば、たとえ税務で認められなくても、会計で合理的に計算できる貸倒引当金はきちんと計上すべきであり、そこから計算される税金も会計のものを使うべきだと考えられるのです。
上の図にも書きましたが、法人税等は費用の性格を持っています。
法人税等にふくまれるのは、「法人税・住民税及び事業税」という3つの税金なのですが、これらは基本的に利益に対応した税率に基づいて計上されるものです。
なので、利益と直接対応する費用として、法人税等は税引前当期純利益の下に特別扱いで書かれます。
こうして、企業活動の結果である利益と、その利益に対応した法人税等を書くことにより、有用な会計情報が伝えられるというわけです。
ちなみに、他に特別扱いをするものとしては消費税があり、法人税等や消費税以外の税金費用は「租税公課」としてまとめられます。
ここまでの内容をまとめると、
・税務で認められなくても、会計上の金額で計上する
・法人税等は支払額ではなく、会計上の金額にすべき
という考え方があるわけなんですね。
ただ、やっぱりお金を取られるのは税務での金額です。
会計でどんな計算をしても、税金のルール通り支払わなくてはいけません。
その支払った額も有用な情報です。
そこで、損益計算書では「法人税等を調整する」という考え方を取りました。
・法人税等=当期の課税所得に対して支払うべき税額
・法人税等調整額=税務上の税額を会計上の税額に調整するための金額
という形です。
いかがでしょうか?
ここまでで、「会計上のあるべき法人税等」という考え方、そして法人税等調整額について、お分かりいただけたでしょうか?
「でも、実際に多く納税したんでしょ? その差はどうなるの?」
おお、いい質問ですねー。さすが脳内のもう一人の私。
それをお応えするために、もう一つの重要な会計の考え方、「資産負債アプローチ」についてお話ししましょう。
資産負債アプローチ
なんだか難しそうな会計用語が出てきましたが、たいしたことは話しません。
現在の会計の方向性を、ほんのちょっとお話するだけです。
伝統的な会計、だいたい昭和あたりをイメージしてもらえるといいのですが、そのころの会計は、とにかく「適正に期間損益を計算しよう!」という考え方が中心でした。
上でもお話しましたが、当期純利益はとても重要な情報です。
それは今現在でも変わりません。
ですが、昭和の頃の会計は本当に収益費用ばかり考えていました。
資産負債は収益費用をつなぐもの、ぐらいの考え方で、それは収益費用アプローチと呼ばれています。
しかし、だいたい平成あたりから、「資産負債をもっとしっかり見よう!」という考え方が広がっていて、それを資産負債アプローチと呼びます。
別に試験に出るわけでもないので、名前なんて覚えなくてもいいのですが、
「今は資産負債をしっかり見てるんだー」
という意識を持っておくのは、今後、簿記会計に関わっていく上でとても大切になると思うので、頭の片隅に入れておいてください。
この具体例には、「その他有価証券」があります。
その他有価証券は決算時に評価換えを行い、その他有価証券評価差額金を計上しますが、これは「収益費用ではなく、資産負債から見よう」という考え方に基づいて処理が行われます。
「その他有価証券評価差額金はよく分かんないです……」
と、けっこうな方が思われているので、簡単に補足をします。
(税効果会計でその他有価証券を扱いますので、不安な方はここで必ず復習を)
あれも、会計の根本的な考え方を知らないと難しいポイントです。
ただ、「資産負債の測定を収益費用より重視しているんだ」と知っていれば、分かりやすくなります。
その他有価証券は、「その他」ですから、売買目的でも満期保有でも子会社・関連会社株式でもない、それら以外の全部が入っています。
なので、いろんな性格があるんですが、一番代表的なのは、
「取引先などの親しい会社同士で持ち合う株式」
です。
その他有価証券をイメージするときはこれをイメージすると分かりやすいです。
どうして親しい会社で株式を持ち合うのか。
多くの場合、敵対会社などから買収をされないようにする防衛策のため、です。
会社において株主は絶大な権力を持っています。
株主総会という会議で、たとえば会社トップの役員などを選んだり辞めさせたりできるのです。
なので、株式が見知らぬ人に渡らないよう、仲間内で持ち合ったりするのですね。
で、その仲間の会社の株式ですが、たとえば100万で買った株式が、150万になったとしましょう。
売れますかね?
まー、「売る!」って人もいるでしょうけど、すごい大切な取引相手だったら、売ってしまうと事業を行う上で問題が出たりしますよね。
そういった、
「事業を遂行(すいこう)する上での問題とかですぐには売れない!」
ということが、その他有価証券ではけっこう多くあります。
では、この売れない株式、財務諸表には100万円と書きましょうか、150万円と書きましょうか。
もう、お分かりですかね。
資産負債を厳密に書くなら、これは150万円と書くべきです。
これが売買目的有価証券なら評価益50が計上されます。
(借)売買目的有価証券 50 /(貸)有価証券評価益 50
で、この評価益は収益ですから、決算において損益振替と資本振替が行われます。
(ここでは、損益が評価益だけだったとします)
(借)有価証券評価益 50 / (貸)損益 50
(借)損益 50 / (貸)繰越利益剰余金 50
こうして、評価益の分だけ繰越利益剰余金という純資産が増加しました。
損益が出た分だけ税金が増え、繰越利益剰余金が増えた分だけ企業が配当できる金額も増えることになります。
では、これがその他有価証券ならどうなるでしょう。
たしかに、価値は上がっていて150万と書くべきですが、事業を遂行するときなどの制約があるため、簡単には売れません。
売れないのに、もし「評価益」という収益にしてしまうと、税金が増えたり、配当できる金額が増えたりして、企業からお金が流れていってしまいます。
そこで考えたのが、
「その他有価証券の評価の差益や差損を、純資産に直接入れてしまおう!」
という方法です。これによる仕訳が、
(借)その他有価証券 50 /(貸)その他有価証券評価差額金 50
となるわけです。
かなり長い話にお付き合いいただいて恐縮なのですが、
・現在の会計は資産負債を重視するケースが多くなってきた
という認識はとても大事なので、軽く理解だけをお願いします。
そして、この資産負債アプローチの考え方が、税効果会計でも用いられているのです。
税効果会計の目的
税効果会計を行う2つの目的
ようやく本題ですが、いきなり結論から始めます。
税効果会計は、
・損益計算書において税引前当期純利益と法人税等を合理的に対応させる
・貸借対照表において将来の税金の前払と未払を表示する
という2つの目的があります。
上が「適正な期間損益」、下が「資産負債アプローチ」に基づく考え方になります。
会計理論の用語は別に覚えなくていいですが、P/LとB/Sの両面で「税効果」を表示することを確認してください。
(簿記1級や税理士・会計士を目指す方は、用語も少しずつ覚えてくださいねー)
P/Lの方は、なんとなく分かると思うのです。
「税務上の支払額を、法人税等調整額で会計上の正しい税額に調整する」
という内容はお話しましたね。
でも、その「ズレた部分はどうなるのか?」という疑問がわきます。
財務相表を作るときは会計上が正しいとは言え、実際に納税するのは税務上の金額だけです。
そこで、税効果にはルールがあります。
税効果が生じる状況をここまでは簡単に、
「会計上と会計上の税額が異なる場合」
と言ってきましたが、正しくは、
「会計上の資産・負債と税務上の資産・負債が異なる場合」
なのです。
って言われてもよく分からないと思いますが、続けて言うと、
「会計上の資産・負債と税務上の資産・負債が異なる場合、一時的に税額の差異(ズレ)が発生するが、その差異は将来において解消する。それを期間配分する」
ということになります。
ここは難しいので、とりあえずは、
「資産・負債がズレると一時的に税額もズレる」
「でも、そのズレは将来に解消する」
「税効果はそれを正しい期間に対応させる」
というのを、ふんわりイメージしてみてください。
言葉だけでは分かりにくいので、具体例を。
×1年度の話で、「損金不算入」という言葉が出てきますが、これは、
「費用として計上したけど、税務では損金と認められなかった」
ということを表しています。
つまり、貸倒引当金の計算において、会計上と税務でズレが生じたわけです。
税率を30%とすると、費用500が認められなかった分だけ利益500が増えて、税務上の税額は会計よりも、
税務の利益+500×税率30%=税金の支払額+150
と増え、150多く支払うことになるわけです。
で、「損金不算入」という言葉から、収益費用側に目が向かいがちですが、ここで資産負債側にも目を向けてください。
上記の黄色に着目してもらうと、収益費用と損金益金だけでなく、資産負債もズレていますね。
大事なのは、このズレた資産負債は翌期以降に持ち越されるということです。
会計上は「貸倒引当金500」がありますが、税務ではゼロです。
この影響で、翌期に「売掛金500が貸倒れた」という場合、計算結果が変わってくるのです。
×2年度の黄色文字に着目してください。
会計では、貸倒引当金繰入の費用計上を×1年に行っているため、×2年で貸倒れが起きた場合は、先に引当てて計上していた貸倒引当金を相殺して処理します。
税務では、貸倒引当金がないため、×2年で貸倒れが起きた場合は貸倒損失を計上して、その期の損失とします。
貸倒引当金の有無で、会計上は費用ゼロ、税務上は損金500が計上されました。
これにより、会計の利益よりも税務上の利益(課税所得)が500少なくなるので、
税務の利益△500×税率30%=税金の支払額△150
と、今度は税務の方が、税金の支払額が150減ることになりました。
税金の支払いが、×1年度で会計より150増え、×2年度で家計より150減っていますが、これは貸倒引当金500の増減と連動しています。
上の図を軽く眺めて、費用と損金のズレが貸倒引当金と連動して起きていることをご確認ください。
このようにまず貸倒引当金にズレが発生し、その貸倒引当金がすべてなくなれば、税額のズレも解消する――ということになります。
この解消という考え方が重要です。
税金の計算方法の違いによって会計の負債と税務の負債の金額も異なってくるケースでは、その負債が消滅したとき、税額のズレが解消するわけです。
これは資産の場合も同様です。
覚えなくてもいい用語ですが、こういう資産・負債の会計と税務の差異を一時差異と呼びます。
そして、この一時差異が税効果の対象となります。
「じゃあ、一時じゃない税効果もあるの?」
はい、あります!
たとえば、企業が法律違反などによって罰金を払うことになったとします。
その罰金の支払いは会計上だと費用です。
費用である罰金のおかげで利益が減るわけですが、利益が減った分だけ税金も減ったら……なんか不公平感ありません?
悪いことした結果の罰金のおかげで税金が減るぜ、やったー!――ってのはよくないので、税務上では罰金は損金不算入となります。
この場合、罰金と連動して動くのは現金などの支払いだけです。
支払う金額以外で連動する資産負債はありません。
そして、会計でも税務でも支払った分は支払った分だけなくなるのは一緒です。
なので、いつまで経っても会計と税務の差異が解消することはありません。
こういう差異は永久差異といって、会計と税務の税額がズレてもなにも処理はしません。
つまり、税効果会計を行うのは一時差異があるときだけなのです。
と、まあ、ちょっと税法の話が混ざったので分かりにくかったですかね。
とりあえず、
・会計と税務の資産・負債がズレたとき(一時差異)に税効果
・ズレた資産・負債がなくなったとき、一時差異も解消する
ということだけ確認できればOKです!
この「一時差異」と、「正しいのは会計の計算である」という2点。
これを考えると、会計上で税金のとある効果を表示することができるのです。
説明のため、先ほどの図表をもう一度貼ります。
まず、×1年度のとき会計として正しい法人税等は、
税引前当期純利益2,000×税率30%=600
となります。
ですが、税務上との計算のズレがあるため、150を追加し、750を払うことになります。
この追加された150は、貸倒引当金と連動して×2年で解消します。
×2年度のとき会計として正しい法人税等は、
税引前当期純利益2,000×税率30%=600
となりますが、税務上の計算とのズレにより150少なく、450の支払いで済むことになります。
ここで、×1年度の税金の支払いをこう考えてみてください。
「会計上、利益と対応する正しい税金は600なのだけど、150多く払った。この追加の支払い150は将来ズレが解消するときの、税金の前払いなのだ」
で、×2年度の税金の支払いは、
「会計上、利益と対応する正しい税金は600なのだけど、150少なくて済んだ。これは、前もって税金を前払していたおかげなのだ」
という感じです。
説明のため、図を少し変えて書きます。
この場合、×1年度の会計の正しい計算で求められる有用な情報としての利益は、
「成果(収益)9,000-犠牲(費用)7,000=利益2,000」
となります。
これに対応した「会計上あるべき税額」は600で、×2年度も同様に600。
一方、税務上で計算された支払うべき税額は×1年度が750で、×2年度が450。
一時差異が発生するためにいったん多く払いますが、その分だけ、将来の会計上の法人税等から支払額が減額されます。
この「いったん払って、後で支払額を減らす」金額を、税金の前払ととらえるわけです。
この前払いは前払費用などと同様に資産として扱います。
本来なら税金を多く支払うはずなのだけど、前もって払った分だけ支払額を減らせる権利なので資産になるのです。
このように、一時差異(会計上と税務上の資産・負債のズレ)というものは、その一時差異が解消するときに将来の会計上の法人税等の支払額が増減する効果を生み出すのです。
この効果は、将来支払額が少なくて済むなら前払=資産ですし、将来支払額が多くなるのなら未払(後払い)=負債となります。
これを、「今の資産負債を厳密に書こう!」という考え方に基づいて財務諸表に計上する会計が、税効果会計というものになります。
このとき使う科目は、
・税金の前払=繰延税金資産
・税金の未払=繰延税金負債
となります。
こんな感じで、税金の前払が発生したとき、
(借)繰延税金資産 150 / (貸)法人税等調整額 150
という仕訳を書き、その前払が解消したとき、
(借)法人税等調整額 150 / (貸)繰延税金資産 150
という仕訳を書く。
これが税効果会計の基本的な処理となります。
まとめ
長々と話してきましたが、どうですかね?
税効果会計には、
・損益計算書において税引前当期純利益と法人税等を合理的に対応させる
・貸借対照表において将来の税金の前払と未払を表示する
という2つの目的があるということがお分かりいただけたでしょうか。
そうして、「法人税等調整額」を書くことによって、損益計算書に当期純利益と対応する会計上の法人税等を示すことができ、「繰延税金資産・繰延税金負債」を書くことで、貸借対照表上に将来の税金の支払額に対する前払額・未払額を示すことができるわけです。
とまあ話してきましたけど、やっぱり難しいですよね。
会計士の受験生でも苦戦する話ですから、まずはなんとなくでOKですよー。
ここから問題を解いていくときには、
「会計上の資産・負債のズレによって一時差異が出る」
「一時差異が発生したら税効果の発生の処理をする」
「一時差異が解消したら税効果の解消の処理をする」
ということさえ分かっていれば、かなり解きやすくなります。
(なお、税効果は何年にもわたって発生を積み重ねたり、一部分だけ解消したりすることもあります)
以上、「税効果会計ってなんのためにするの?」というお話でした!
ここまで読んでくださってありがとうございます!
簿記2級の受験生だと、税効果の理屈を分かってない人が大半なので、ここがきちんと分かればかなり有利になりますからねー!
それではまた、ご質問をお待ちしています!